1nmのカーボンナノチューブゲートを持つトランジスタ

10年以上もの間、技術者達は集積回路部品サイズ縮小競争のゴールを目指していました。従来型半導体においては、物理法則が、現在市場に出回っているハイエンド20nmゲートトランジスタの約4分の1のサイズである5nmにトランジスタゲートの大きさに関する閾値を設けています。しかし、一部の自然法則は破られるために存在しています。

米エネルギー省のローレンスバークレー国立研究所(バークレー研究所)で、職員科学者のアリ・ジャベイ教授率いる研究チームが、ちゃんと機能する1ナノメートルゲートを持つトランジスタを作り出すことで、見事に法則を破りました。ちなみに、人間の髪の毛一本は、約5万ナノメートルの太さです。

プロセスルール

Researchers use novel materials to build smallest transistor with 1-nanometer carbon nanotube gate

“We made the smallest transistor reported to date,” said Javey, a lead principal investigator of the Electronic Materials program in Berkeley Lab’s Materials Science Division. “The gate length is considered a defining dimension of the transistor. We demonstrated a 1-nanometer-gate transistor, showing that with the choice of proper materials, there is a lot more room to shrink our electronics.”

「”我々は、今まで報告されている最も小さいトランジスタを作りました。”と、バークレー研究所の材料科学部門電子材料プログラムの責任研究者ジャベイは語った。”ゲート長は、トランジスタの寸法定義と見なされています。我々は1nmゲートトランジスタを実証し、適切な材料の選択で、電子機器小型化のより多くの余地があるの示しています。”」

プロセスルールとも呼ばれる最小加工寸法ですが、ゲート長がトランジスタの大きさを決めるのかというと、必ずしもそうではないみたいです。実際には配線ピッチが決めているらしく、最小加工寸法値は、最小配線ピッチ半分(ハーフピッチ)ということみたいです。しかし、この辺のところが近年かなり曖昧になってきているようなので、注意が必要みたいです。去年の2月の記事なのでかなり古いですが、参考程度に目を通しておくといいかもしれません。

今年は14nm半導体決戦の年〜ところで14nmとはどこの長さ?

最近では、フォトマスク(電子部品の回路パターンを転写する際の原版のガラス乾板)上のゲート長よりもはるかに細くでききるプロセス技術が導入されたため、このゲート長が最小加工寸法として躍り出た。MPUの演算性能を表す指標としては、配線ピッチよりもむしろこちらの方が新しい世代の技術を表している上に、配線のハーフピッチよりはるかに小さい値となるので、微細化を誇示したいロジックICメーカーやファウンドリーでは、微細化を象徴する数値としてゲート長を採用した方がビジネスに有利とみている。このため、これを商用ノードと呼ぶ人もいる。

フォトマスクの微細化は今後、EUVやX線を使った露光装置を使うみたいですが、まだ研究段階のようなので、実用化はされていないみたいです。

The development could be key to keeping alive Intel co-founder Gordon Moore’s prediction that the density of transistors on integrated circuits would double every two years, enabling the increased performance of our laptops, mobile phones, televisions, and other electronics.

「その開発は、集積回路上のトランジスタ密度が2年毎に倍増して、ノートパソコン、モバイル電話、テレビ、その他の電子機器の性能を向上させるという、インテル共同創業者ゴードン・ムーアの予測を生き続けさせることを可能にするかもしれません。」

スマホやノーパソの性能で言えば、ノーパソの性能は完全に歩止まりしています。これはインテルの市場寡占化が進んだのが原因ですが、やはり競争がないとダメということでしょう。電池の持ちが多少良くなった程度で性能はほとんど変わらず、それでいて価格だけは上昇ではどうすることもできません。

“The semiconductor industry has long assumed that any gate below 5 nanometers wouldn’t work, so anything below that was not even considered,” said study lead author Sujay Desai, a graduate student in Javey’s lab. “This research shows that sub-5-nanometer should not be discounted. Industry has been squeezing every last bit of capability out of silicon. By changing the material from silicon to MoS2, we can make a transistor with a gate that is just 1 nanometer in length, and operate it like a switch.”

「”半導体産業は長い間、5nm未満のゲートはどれも機能しないだろうと決め込んできているので、それより低いものは考慮さえされてきませんでした。”と、ジャベイのラボにいる大学院生で研究筆頭著者ンジャイ・デサイは語った。”この研究は5nm未満ゲートが無視されるべきではないことを示しています。業界はシリコンから全ての能力を絞り出してきました。シリコンからニ硫化モリブデンへ材料チェンジすることで、長さにしてちょうど1ナノメーターであるゲートを持ったトランジスタを我々が作り出すことと、それをスイッチのように操作することを可能にしています。

従来の半導体(匕化ガリウム等)だと5nmが限界だとは聞いたことがあります。新たな材料が色々試されていますが、リソグラフィ技術も進歩していかないと、微細化は難しいと言われています(7nm世代以降のリソグラフィ技術)。

電子が制御不能

Transistors consist of three terminals: a source, a drain, and a gate. Current flows from the source to the drain, and that flow is controlled by the gate, which switches on and off in response to the voltage applied.

「トランジスタは、ソース、ドレイン、ゲートの3つの各種端子から構成されています。電流はソースからドレインへ流れて行き、その流れは、電圧印加に応じてスイッチをオン・オフしているゲートによってコントロールされています。」

Both silicon and MoS2 have a crystalline lattice structure, but electrons flowing through silicon are lighter and encounter less resistance compared with MoS2. That is a boon when the gate is 5 nanometers or longer. But below that length, a quantum mechanical phenomenon called tunneling kicks in, and the gate barrier is no longer able to keep the electrons from barging through from the source to the drain terminals.

「シリコンと二硫化モリブデンのどちらも結晶格子構造を持っていますが、シリコンに流れる電子は二硫化モリブデンと比べると軽くて抵抗が少ないです。それはゲートが5ナノメートルかそれ以上だと恩恵ですが、その長さ未満だと、トンネル効果と呼ばれる量子力学現象が生じて、ゲート障壁はもはやそれ以上、電子がソース端子からドレイン端子へ押し進むのを止めることができなくなってしまいます。」

電子がソース端子からゲート障壁を通り抜けてドレイン端子へトンネリングしてしまい、制御不能になってしまうようです。困ったもんです。

“This means we can’t turn off the transistors,” said Desai. “The electrons are out of control.”

「”これはトランジスタをオフできないことを意味します。”とデサイは言った。”電子は手がつけられなくなります。”」

Because electrons flowing through MoS2 are heavier, their flow can be controlled with smaller gate lengths. MoS2 can also be scaled down to atomically thin sheets, about 0.65 nanometers thick, with a lower dielectric constant, a measure reflecting the ability of a material to store energy in an electric field. Both of these properties, in addition to the mass of the electron, help improve the control of the flow of current inside the transistor when the gate length is reduced to 1 nanometer.

「二硫化モリブデンを流れる電子は重いので、それらの流れは小さなゲート長でコントロールが可能です。二硫化モリブデンはまた、材料が電場にエネルギーを蓄えるための能力を示す尺度である誘電率が一層低い、約0.65nm厚の原子並みに薄いシートへ縮小可能です。これら双方の性質が、電子の重さに加えて、ゲート長が1nmへ縮められた時トランジスタ内部を流れる電流の制御を向上させるのに役立っています。」

カーボンナノチューブ

Once they settled on MoS2 as the semiconductor material, it was time to construct the gate. Making a 1-nanometer structure, it turns out, is no small feat. Conventional lithography techniques don’t work well at that scale, so the researchers turned to carbon nanotubes, hollow cylindrical tubes with diameters as small as 1 nanometer.

「ひと度二硫化モリブデンを半導体材料として決めたら、次はゲートを構築する番でした。1ナノメートル構造の制作は至難の業であることが分かります。従来のリソグラフィ技術はそのスケールではうまく働かないので、研究者は、1nm程度の直径を持つ、中空の円筒チューブであるカーボンナノチューブに救いを求めました。」

They then measured the electrical properties of the devices to show that the MoS2 transistor with the carbon nanotube gate effectively controlled the flow of electrons.

「その後、カーボンナノチューブゲートを持った二硫化モリブデントランジスタが効果的に電子の流れを制御することを示すためにそのデバイスの電気的性質を測定しました。」

二硫化モリブデントランジスタのゲートにカーボンナノチューブゲートを採用することで、リソグラフィ技術の壁を打ち破ったようです。

“This work demonstrated the shortest transistor ever,” said Javey, who is also a UC Berkeley professor of electrical engineering and computer sciences. “However, it’s a proof of concept. We have not yet packed these transistors onto a chip, and we haven’t done this billions of times over. We also have not developed self-aligned fabrication schemes for reducing parasitic resistances in the device. But this work is important to show that we are no longer limited to a 5-nanometer gate for our transistors. Moore’s Law can continue a while longer by proper engineering of the semiconductor material and device architecture.”

「”この研究は今までで最も短いトランジスタを実証しました。”と、カリフォルニア大学バークレー校の電気工学・コンピュータサイエンス学科教授でもあるジャベイは言った。しかし、それは概念実証に過ぎません。我々はこのトランジスタをまだチップ上に詰め込んではいませんし、このことを何十億回も繰り返して実行してはいません。また、デバイス中の寄生抵抗を減少させるための自己整合製造スキームを作成していません。とは言っても、この研究は、トランジスタに対する5nm制限にこれ以上縛られないで済むことを示すためには重要です。ムーアの法則は、半導体材料とデバイスアーキテクチャの適切な設計技術によってもう少し長く続くことが可能になるかもしれません。」

二硫化モリブデンとカーボンナノチューブを組み合わせた1nmのゲートを持った史上最小のトランジスタを作ったというだけで、実用性があるかどうかは分からないようです。これからの研究次第ということらしいので、将来性があるのかどうかは未知数です。

グラフェン、ボロフェン、カーボンナノチューブ、TMD、フォスフォレン、二硫化モリブデンと将来楽しみな材料研究が猛烈な勢いで行われているので、5年後ぐらいでその成果が現れ始めるのではないでしょうか。