量子重ね合わせのフェムト秒観測に成功!

それは間違いなく量子物理学で最も有名な実験です。二重スリット実験では、粒子は2つの平行なスリットを持つプレート上に発射されるので、粒子が裏側の検出器に到達可能な2つの異なる経路が存在することになります。それの量子的性質のおかげで、その粒子は、これら2つの可能性のどちらかを選ぶ必要がなく、同時に両方のスリットを通り抜ける事ができます。ヘリウム原子がレーザー光線で電離された時に、よく似た事を観測できます。

ヘリウムイオン化

Two Paths at Once: Watching the Buildup of Quantum Superpositions

Just like the two paths through the plate, the ionization of helium can happen via two different processes at the same time, and this leads to characteristic interference effects. In the case of the helium atom, they are called “Fano resonances”. A team of scientists from TU Wien (Vienna, Austria), the Max-Planck Institute for Nuclear Physics in Heidelberg (Germany) and Kansas State University (USA) has now managed to observe the buildup up of these Fano resonances – even though this effect takes place on a time scale of femtoseconds.

「プレート中の2つの通り道のように、ヘリウムのイオン化は、同時に2つの異なる過程を通して起こり得、これが、特有の干渉効果をもたらします。ヘリウム原子について言えば、それらはファノ共鳴と呼ばれています。ウィーン工科大学、マックスプランク核物理学研究所、カンザス州立大学の科学者チームは、現在、このファノ共鳴のビルドアップをうまく観測しています。この現象が、フェムト秒の時間規模で生じるにもかかわらずにです。」

フェムト秒、アト秒、ゼプト秒と、ナノ秒、ピコ秒とは一体何だったのかと思わされる今日此の頃です。時代の進歩とやらを激しく痛感させられます。

The experiment was performed in Heidelberg, the original proposal for such an experiment and computer simulations were developed by the team from Vienna, additional theoretical calculations came from Kansas State University.

「今回の実験は、ハイデルベルクで行われ、上記の実験とコンピュータ・シミュレーションの原案は、ウィーンチームによって考案され、付加的な理論計算はカンザス州立大学によってもたらされました。」

直接・間接経路

When a laser pulse transfers enough energy to one of the electrons in the helium atom, the electron is ripped out of the atom right away. There is, however, another way to ionize the helium atom, which is a little bit more complex, as Professor Joachim Burgdörfer (TU Wien) explains: “If at first the laser lifts both electrons to a state of higher energy, one of the electrons may return into the state of lower energy. Part of this electron’s energy is transferred to the second electron, which can then leave the helium atom.”

「レーザーパルスが十分なエネルギーをヘリウム原子の電子の一つに転送すると、電子はただちに原子から毟り取られます。しかし、若干複雑ですが、ヘリウム原子を電離する別の方法が存在します。ウィーン工科大学の教授は説明を続けます。”もし、最初にそのレーザーが、両方の電子をより高いエネルギー状態へ持ち上げた場合、電子のひとつは、より低いエネルギー状態に戻る可能性があります。この電子のエネルギーの一部は、別の電子へ移され、その後ヘリウム原子から離れる事ができます。”」

The outcome of these two processes is exactly the same – both turn the neutral helium atom into an ion with one remaining electron. From this perspective, they are fundamentally indistinguishable.

「この2つの過程の結果は全く同じで、どちらも中性ヘリウム原子を、1個の残存電子を持つイオンに変えます。この点から言えば、それらは基本的に一緒です。」

簡単なのが直接経路で、複雑な方が間接経路みたいな感じです。

ファノ共鳴

“According to the laws of quantum physics, each atom can undergo both processes at the same time”, says Renate Pazourek (TU Wien). “And this combination of paths leaves us characteristic traces that can be detected.” Analyzing the light absorbed by the helium atoms, so-called Fano resonances are found – an unmistakable sign that the final state was reached via two different paths. This can also be prevented. During the ionization process, the indirect path can be effectively switched off with a second laser beam so that only the other path remains open and the Fano-resonance disappears.

「”量子物理学の法則によると、各々の原子は、同時に双方の過程を経験可能です。”とパゾウレク氏は言う。”そしてこの経路の組み合わせが、我々に検出可能な特徴的な痕跡を残してくれています。” ヘリウム原子によって吸収された光を解析することで、いわゆる、ファノ共鳴は見つけられます。それは、最終状態が2つの異なった経路を経由して達成される、間違えようのないサインです。また、これは防ぐこともできます。電離過程の間、その間接経路は、もう一方の経路だけを開いたままにして、ファノ共鳴が消えるように、別のレーザー光線を使うことで、効果的にスイッチをオフにする事ができます。」

間接経路をブロックして、直接経路のみ通過(経験)可能にすることによって、ファノ共鳴を消し去る事ができるみたいです。

This opens up a new possibility of studying the time evolution of this process. At first, the atom is allowed to follow both paths simultaneously. After some time, the indirect path is blocked. Depending on how long the system was allowed to access both paths, the Fano-resonance becomes more or less distinct.

「この事が、このプロセスの時間発展を研究するための新しい可能性を開いています。はじめに、原子は、同時に両方の経路を辿ることが許されます。しばらくして、間接経路はブロックされます。その系が、どのくらいの時間、両方の経路をアクセスできるかによって、ファノ共鳴は、程度の差こそあれ、識別可能になります。」

直接経路のみ通過可能になるまでの時間が重要なようです。

“Fano resonances have been observed in a wide variety of physical systems, they play an important role in atomic physics”, says Stefan Donsa (TU Wien). “For the first time, it is now possible to control these resonances and to show precisely, how they build up within femtoseconds.”

「”ファノ共鳴は、さまざまな物理系で観測可能で、それらは、原子物理学で重要な役割を果たしています。”とドンサ氏は語る。”初めて、この共鳴を制御し、それらが、フェムト秒以内でどのようにして形成されるのかを正確に示す事が今や可能です。”」

ファノ共鳴を制御可能にした事が、今回の研究の肝みたいです。

“These quantum effects are so fast that on our usual time scales they appear to happen instantaneously, from one moment to the next”, says Stefan Nagele. “Only by employing new sophisticated methods of attosecond physics it has become possible to study the time evolution of these processes.” This does not only help quantum scientists to understand the fundamental theory of important quantum effects, it also opens up new possibilities of controlling such processes – for example facilitating or inhibiting chemical reactions.

「”こういった量子効果は、あまりにも速いので、我々の通常の時間尺度では、それらは、瞬時に頻繁に起こっているように見えます。”とステファン氏は語る。”アト秒物理学の最新技法を用いることでのみ、このような過程の時間発展を研究することを可能にしています。” この事は、量子科学者達が、重要な量子効果の基本定理を理解するのに役立つだけではなく、そのようなプロセス(例えば、化学反応を促進したり、あるいは、阻害したり)をコントロールするための新しい可能性を開拓しています。」

2個の電子のうちの一つが、ヘリウム原子から離れる時、間接経路と直接経路を同時に辿ることが可能な事が、スーパーポジション(量子の重ね合わせ)という事みたいです。量子重ね合わせは、量子コンピュータの基本でもあるので、今回の研究成果は量子コンピューターの研究にもかなり役立つのではないでしょうか。