イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究者チームが、窒化ガリウム (GaN) オンシリコントランジスタ技術を、その素子を構成している半導体層の構成物を最適化することで向上させています。VeecoとIBMの産業パートナーと協働で、そのチームは、より大きな産業基準ウエハーサイズに拡大可能なプロセスを使った、200mmシリコン基板上に高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造を作り出しました。電気・情報工学科助教授キャン・バイラム氏と彼のチームは、既存のCMOS製造工程と互換性があり、サファイアや炭化ケイ素のような他の基板オプションより安価な、シリコン基盤上にGaN HEMT 構造を作り出しています。しかし、シリコン自身に問題があって、すなわち、格子定数、あるいは、ケイ素原子間の空隙が、その上に成長したGaNの原子構造と一致していません。
ケイ素ー窒化ガリウム間緩衝層
Team advances GaN-on-Silicon for scalable high electron mobility transistors
”GaNを上に成長させる時、レイヤー間には多くの歪が存在しているので、格子定数を適切な大きさに変える手助けをするために、緩衝層(シリコンと窒化ガリウムの間に)を成長させました。”と、Journal of Physics D: Applied Physics誌に掲載された、当グループの研究論文”Investigation of structural, optical, and electrical characteristics of an AlGaN/GaN high electron mobility transistor structure across a 200mm Si(1 1 1) substrate,”の筆頭著者のECE学部生研究員ジョシュ・ペロゼク氏は言っています。
こういった緩衝層なしでは、ひび割れや他の欠陥が GaN 材料中に形成されてしまい、そのトランジスタが、正常に機能することを妨げます。特に、こういった、原子が存在すべき貫通転位や貫通穴の欠陥が、素子中2次元電子ガス経路の性質を台無しにしてしまいます。この経路は、電流を伝導して高周波数で機能するためのHEMT能力には必須です。
高2次元電子ガス濃度
”こういった GaN [HEMT] 素子にとって、唯一最も重要な事が、シリコンとその上の多種多様なGaN系レイヤー間界面の経路における電子蓄積周りで、高い2次元電子ガス濃度を有しているという事です。”とバイラム氏は語りました。
“The problem is you have to control the strain balance among all those layers—from substrate all the way up to the channel—so as to maximize the density of the of the conducting electrons in order to get the fastest transistor with the highest possible power density.”
”問題は、可能な限り高い出力密度を持った最高速トランジスタを手に入れるために、伝導電子密度が最大となるように、基板から経路までの全てのそういった層間のひずみバランスをコントロールしなければならない事です。”
3つの異なる緩衝層構成の研究後、バイラム氏のチームは、アルミニウム窒化ガリウム製のより厚い緩衝層が、貫通転位を軽減し、そういった層を積層することがストレスを軽減することを発見しました。このタイプの構成を使って、チームは、1,800 cm2/V-secの電子の移動度を達成しました。
”GaN上の歪が少ないほど、その移動度が高まり、最終的により高速なトランジスタ動作周波数に一致します。”と、5Gアプリ用にこの素子のスケーリングを主導している ECE院生研究員スアン・ピング・リー氏が言っています。
次世代5Gネットワーク用素子
According to Bayram, the next step for his team is to fabricate fully functional high-frequency GaN HEMTs on a silicon platform for use in the 5G wireless data networks.
「バイラム氏によると、彼のチームの次の一歩が、5Gワイヤレスデータネットワークで利用可能な、シリコンプラットフォーム上に、完全に機能する高周波数GaN HEMTを作り上げることです。」
When it’s fully deployed, the 5G network will enable faster data rates for the world’s 8 billion mobile phones, and will provide better connectivity and performance for Internet of Things (IoT) devices and driverless cars.
「それが完全運用されれば、5Gネットワークは、世界の80億台の携帯電話により高速なデータ転送速度を実現し、モノのインターネット機器と自動運転車に対し、より優れた接続性と性能を提供できるようになります。」
高電子移動度トランジスタは、高速周波数用のCPUにも使えそうな技術なような気がします。こういった新種のトランジスタが、早く実用化される事を期待します。