亜鉛は、多くの細胞プロセス、例えば、学習や記憶プロセスに関与していたり、未知の役割を果たしている極めて重要な微量栄養素です。ナノ電気化学的測定を使い、スゥエーデン研究者達は、亜鉛がメッセンジャー分子の放出に影響を与えている事を明らかにすることで、理解を深めています。Angewandte Chemie誌に公表されているように、亜鉛は、小胞に貯蔵されているメッセンジャー分子数と細胞からの放出動力学を変化させています。
エクソサイトーシス
Zinc regulates the storage and release of neurotransmitters
When signals are transmitted by synapses, messenger molecules (neurotransmitters) are released from storage chambers (synaptic vesicles) into the synaptic cleft, where they are “recognized” by neighboring nerve cells. This release is based on exocytosis: The vesicle docks at the cell membrane, opens at the point of contact, releases part of its contents to the outside, closes, and separates from the plasma membrane so it can be refilled.
シグナル (信号) がシナプスによって伝達される時、メッセンジャー分子(神経伝達物質)は、貯蔵室 (シナプス小胞) から、隣接する神経細胞によってそれらが認識される、シナプス間隙へと放出されます。この放出はエクソサイトーシスに基いて、それは、小胞が細胞膜にドッキングして、接点を開き、そこから外部に向けて、その中身の一部を放出、開口部を閉じて、それが補充されるように細胞膜から切り離されます。
PC12細胞
A team led by Andrew G. Ewing at Gothenburg University, Sweden, used carbon fiber electrodes with nanotips to study the influence of zinc on these processes. They carried out measurements on PC12 cells that release the neurotransmitter dopamine when stimulated by a high potassium concentration, analogous to nerve cells. “By applying an electrode tip to the surface of the cell, we can follow the opening of an individual vesicle and compute the number of molecules released,” says Ewing. In contrast, if the tip of the electrode is inserted into the cell, the vesicles in the cytoplasm stick to the electrode and release their full contents. Says Ewing: “The current transients allow us to determine how many transmitter molecules are contained in individual vesicles directly in the cytoplasm of the living cells.”
スウェーデンにあるヨーテボリ大学のアンドリュー・G・ユーイング氏率いるチームは、こうしたプロセスに及ぼす亜鉛の影響を研究するために、ナノチップを持つカーボンナノファイバー電極を使っています。彼らは、高カリウム濃度によって刺激されると、神経伝達物質ドーパミンを放出する、神経細胞に類似したPC12細胞の測定を実施しました。”電極先端を細胞表面に当てることで、我々は、各小胞の開口を追跡し、放出された分子の数を計算することができました。”と、ユーウィング氏は言っています。その一方、もし、電極チップが細胞の中へ挿入されると、細胞質内の小胞は電極にくっついて、その中身を完全に放出します。”電流トランジェントは、我々に、生体細胞の細胞質内の各小胞に何個の伝達物質分子が含まれているかを、そのまま測定することを可能にしています。”と、ユウィング氏は言っています。
亜鉛を使って処置した後で、小胞中に含まれる神経伝達物質の総数は、平均して27%減っています。しかし、刺激により放出されたトランスミッタの量は一定でした。電流トランジェントの分析が、この明らかな矛盾の説明を提供しています。ユーイング氏によると、”亜鉛が放出の動力学を変え、小胞の開口前と開口後、孔隙が細胞膜との接合点を形成しています。亜鉛で処置後、その孔は通常よりもゆっくりと閉じ、従って、小胞はより長く開き続け、伝達物質分子の92%を外部へ放出しています。亜鉛無しだと、66%しか放出しません。”
亜鉛が記憶に重要
In order to investigate this phenomenon more closely, the cells were stripped down layer by layer from the outside in and were analyzed by mass spectrometry. The researchers found one zinc species near the cell membrane and a second in the interior of the cell. “The former is capable of binding to protein kinase C, an enzyme that binds to the membrane to regulate the speed of exocytosis. The zinc species inside the cell could slow down the transport protein that loads the dopamine into the vesicles,” suggests Ewing. “Our results finally provide a connection between zinc and the regulation of neurotransmitter release. This could be important for the formation and storage of memories.”
この現象をもっと深く調査するために、細胞は、外側から内側へ層ごとにはがされ、質量分析法を使って分析されました。研究者たちは、細胞膜傍で1つの亜鉛種を、細胞内部で別の亜鉛種を発見しています。”前者は、エクソサイトーシスの速度を制御するのに細胞膜に結合する、蛋白質キナーゼCに結合することができます。細胞内部の亜鉛種は、ドーパミンを小胞内にロードする輸送タンパクを減速させることができます。我々の発見が、遂に、亜鉛とその神経伝達物質放出制御のつながりを提供しています。この事は、記憶形成と記憶保存に対して、重要な意味を持っているかもしれません。”と、ユーイング氏は示唆しています。
亜鉛が記憶に非常に重要な意味を持っているようなので、亜鉛を食事から摂取することが大事なのかもしれません。ミネラルはとかく不足しがちなので、注意が必要と言えます。