物理学者達は、ある種の修正がなされた量子力学と量子重力の理論によって予測されているように、初期宇宙におけるviolations of energy conservation(エネルギー保存の違反)が、物理学の歴史において最悪の理論予測と称される事もある、宇宙定数問題を説明するかもしれないと提唱しています。フランスにあるエクス=マルセイユ大学のティボー・ジョゼット氏とアレハンドロ・ペレス氏、メキシコ国立自治大学のダニエル・スダルスキー氏は、Physical Review Letters誌に論文を掲載しました。
宇宙定数問題
Violations of energy conservation in the early universe may explain dark energy
”今回の研究の主な成果は、2つの一見非常に異なる問題、すなわち、宇宙の加速膨張と微視的物理学の間の予想外の関係にありました。”と、ジョゼット氏はPhys.orgに話しました。”この事は、未だ解決には程遠い、cosmological constant problem (宇宙定数問題)に対する、今までにない新鮮な見解を与えてくれています。”
アインシュタイン氏は、当時は宇宙は静的であると考えられていたので、宇宙が拡大することが起こらないように、彼の一般相対性理論を修正する目的で、1917年にそもそも宇宙定数の概念を提唱しています。
今は、近代的観測が、宇宙が加速的に膨張していることを示しているので、宇宙定数は、今日、ダークエネルギーの最もシンプルな形と考えられていて、最新の観測結果を説明する方法を提供しています。
しかし、宇宙定数の大きな理論予測値と微小な観測値との間に、最大120桁違いの巨大な食い違いが存在してしまっています。この不一致を説明するために、いくつかの研究は、宇宙定数は、もっと正確に測定されなければならない、完全に新しい自然定数なのかもしれないことと、その一方で、もう一つの可能性が、理論によって推測されている根本的なメカニズムが間違っていることを示唆しています。
新しい研究は、2番目の考え方に該当し、科学者達が、未だに宇宙定数の根本的原因を完全には理解できていないことを示唆しています。
エネルギー保存の破れ
新しい研究論文の基本的な考え方は、初期宇宙におけるエネルギー保存(の法則)の違反が、あまりにも取るに足らなさ過ぎるので、それらは、ローカルスケール(局地的規模)では、無視できる影響しか与えておらず、現代の実験技術では、依然としてアクセスできないままで、にもかかわらず、他方では、こういった違反が、宇宙定数の現在の値に対して、多大に貢献していたかもしれない可能性があるのです。
ほとんどの人達にとって、エネルギー保存が破られているという見解は、最も基本的な物理的法則について彼等が学んだことの全てに逆行しています。しかし、宇宙規模でのエネルギー保存は、微小規模でそれが不変の法則であるのとは違って不変ではありません。今回の研究の中で、物理学者たちは、特に、エネルギー保存の違反が自発的に発生している、2つの理論を詳細に調べています。
最初の違反のシナリオは、ブラックホールの発生と蒸発などの現象を調査するために、これまで提案されてきた量子論の修正と、波動関数が自発的崩壊を起こす量子力学の解釈にも登場する量子論の修正を含みます。こういったケースでは、エネルギーは、崩壊する物体の質量に比例する量が作り出されています。
エネルギー保存の破れは、時空が、長さの基本的限界(約10-35 mのプランク長)のせいで粒状であると考えられている量子重力へのいくつかのアプローチにも生じています。このspacetime discreteness(時空離散性)は、recombination(再結合)として知られているその期間中ずっと、初期宇宙で光子が電子から分離した時に起こった宇宙定数に寄与し始めたかもしれないエネルギーの増減のどちらか一方をもたらした可能性があります。エネルギーが増えているのか減っているのかは分からないようです。
研究者達が説明しているように、彼等の提案は、1919年にアインシュタイン氏によって、最初に提案されているunimodular gravity(ユニモジュラ重力)と呼ばれている、modification to general relativity(一般相対性理論の修正)に依存しています。
”matter components(物質成分)からのエネルギーは、重力場に譲渡されることができ、このエネルギーの損失が宇宙定数として振る舞います。それは、宇宙の後期膨張によって希釈されることはありません。”と、ジョゼット氏は語った。”従って、遠い遥か彼方昔のエネルギーのほんのわずかの損失や生成が、今の時代に、大きなスケールで、非常に多大な影響を与えているかもしれません。”
エネルギー法則の破れの起源が何であろうと、その重要な結果は、作り出されたか失われたエネルギーが、物質に対する影響は、宇宙の膨張という要因を背景にして、時間とともに減少していった一方で、宇宙定数に対しては、時が過ぎるに従って、より一層大きな影響を与えていったということです。
宇宙定数は未保存エネルギーの記録
別の言い方をするとすれば、物理学者が研究論文の中で説明しているように、宇宙定数は、宇宙の歴史の中で、energy non-conservation(保存されないエネルギー)の記録と考えられることができます。
現在、ここで調査されたエネルギー保存違反が、本当に宇宙定数に影響を与えたのかどうかを知る術はありませんが、物理学者達は、将来の可能性の追加調査予定です。
”我々の提案は、非常に一般的で、どんなエネルギー保存の破れも、有効宇宙定数に貢献するはずだということです。”と、ジョゼット氏は言った。”この事は、標準量子力学を超えた、現象論モデルに対して新しい制限を設定する事を可能にします。”
”他方、dark energy (ダークエネルギー、暗黒エネルギー)が、保存されないエネルギーによって調達されているという直接的証拠は、我々が、value of lambda (ラムダの値、宇宙定数)と後期のみの宇宙定数の斬新的変化に対する制限を現在は入手できるので、ほぼ手が届かないように思われます。”
ダークエネルギー、あるいは、暗黒エネルギーが、エネルギー保存の破れで生じた、保存されないエネルギーによってもたらされているかもしれないという今回の仮説は、面白いです。その保存されないエネルギーの記録が、宇宙定数ということらしいので、宇宙定数とダークエネルギーには密接な関係があるようです。ただ、直接的な証拠はもはや入手不可能で、実際にこの仮説を実証することは無理ゲーっぽいです。