意思決定時に影響を与えている2つの脳神経回路網を特定

オックスフォード大学の英国医学研究審議会脳ネットワークダイナミクスユニットの科学者達は、意思決定時の速度と精度間の釣り合いを制御している、脳内の2つの固有機序を特定しています。eLife誌に掲載された彼等の発見は、人がいかに早く選択肢を選択し、その際必要な情報量を決定している脳内ネットワークに新たな光を当てています。脳内のこの入り組んだ配線のより深い理解が、パーキンソン病等の神経疾患のより効果的な治療法開発の鍵になります。

意思決定時の速度と精度のバランス

Scientists identify two brain networks influencing how we make decisions

意思決定において基本となるスピードと正確度の交換は、過去100年以上にわたって研究され続けていて、いくつかの研究が、脳の subthalamic nucleus region (視床下核領域)が重要な役割を果たしていることを示唆しています。

”過去の意思決定の行動学的研究は、速度・精度調節をしている実際のイベントやネットワークについては何も教えてくれてはいません。”と、統括著者であるオックスフォード大学実験神経学のピーター・ブラウン教授は言っています。”我々は、視床下核の電気的活動の正確な場所とタイミングを判断し、意思決定タスクが実行されている間に収集された行動学的データを使って、その結果を比較することでこの問題を何とか解決したかったのです。”

被験者を使った実験

ブラウン教授と彼のチームは、各自moving-dots(動く点)タスクを遂行するように要求されている、11人のパーキンソン病患者と18人の健康な参加者を使って反応時間をまず調査しました。このタスクは、彼等に、動く点の集団が、左か右のどちらに動いているように見えるかを判斷することを要求しています。タスクの難度は、ある方向に動いている点の数が変化することで変わり、参加者達は、スピードか正確性のどちらか一方を使ってタスクを実行するように、ランダムに交互に入れ替わる指示が与えられました。

研究者達は、参加者達が、点が一方向だけに動く簡単なタスクで、素早い決定を下すよう指示されると、決断がはるかに早いことを発見しています。また、過去の研究と一致して、参加者達が、正確性に重点を置くように指示されt後で、決断により長い時間を費やすテスト中に、はるかに多くのミスを犯すことを明らかにしています。

計算モデルを使って、彼等は、脳にとってより難易度が高いテストにおいては、臨界閾値に達して決断するのに必要な情報を蓄積するために、より長い時間がかかる事を見つけました。参加者達が、速度に焦点を当てるように尋ねられた時、この閾値は、正確度を重視するよう尋ねられた時に比べ、はるかに低くなっています。

2つの脳ネットワーク(神経回路網)

”次の段階は、こういった行動修正と速い決定と正確な決定の間のトラードオフを制御している脳内の活性化されたネットワークを確定することでした。”と、筆頭著者でポスドク特別研究員のダミアン・ヘルツ氏が説明しています。”我々は、最近脳深部電気刺激法を使った治療を受けているパーキンソン病患者の視床下核内部の神経細胞群の電気的活動を測定し、彼等がタスクを命じられる時とタスクに応じる時で異なる、二つのはっきりと区別できるニューラル・ネットワーク(神経回路網)を見つけ出しています。”

“One network increases the amount of information required before executing a decision and is therefore more likely to be activated when accuracy is important, while the second network tends to lower this threshold, especially when the choice needs to be made quickly.”

”1つのネットワークは、決定を実行する前に要求される情報量が増しているので、正確性が重要視される時に活性化されている可能性が高く、その一方で、もう1つのネットワークは、この閾値が、特に、決定を早く下す必要がある時に低くなる傾向にあります。”

その発見が、脳のpre-frontal cortex region(前頭前皮質領域)が、意思決定に寄与していることのさらなる裏付けを付け加え、研究のためのより一層興味深い道を切り開いています。

”我々が特定した部位の1つの活動における変化が、動作制御にも関わっていることを、我々は知っています。”と、ブラウン教授は付け加えた。”こういったニューラルネットワーク間の密接な関係が、共通信号が、決定速度と結果として起こる動作双方における調整に関与していることを意味している可能性があります。こういった機構のさらなる理解が、将来、神経疾患の治療法を向上させるための、特定の神経回路に対する治療的介入に焦点を当てることを可能にしてくれるかもしれません。”

意思決定時に、速度を重視する時と、正確性を重視する時とでは、使う脳ネットワークが違うみたいです。この2種類の神経回路網の特定が、将来的に、パーキンソン病等の神経疾患のための、新しい治療法を開発するのに応用できるみたいなので、期待が持てます。