ウクライナ戦争は、残念ながら、プーチン氏が敗北を認めるまで終わりません。ロシア軍は未だにウクライナ東部の制空権を掌握出来ていないし、黒海の制海権にしても、黒海艦隊旗艦モスクヴァがウクライナ軍のネプチューン対艦ミサイルによって撃沈されてしまったことを考えると、必ずしも完全掌握しているわけではなさそうです。
ハリコフ攻防戦
第二次大戦中の1943年3月15日にハリコフを奪還したドイツ軍は余勢を駆って、3日後の3月18日にベルゴロドも奪還します。独ソ戦において、ドイツ軍とロシア軍は、この重要拠点であるハリコフを巡って4度の攻防戦を戦っています。ハリコフは輸送ハブ基地として非常に重要な拠点だったわけですが、そのロシアの国境に近いウクライナ第二の都市であるハリコフ(カーキフ)を、2月24日の侵攻以来続く昼夜を問わない市内への砲爆撃にもかかわらず、ロシア軍は未だに攻略できずにいます。ロシアにとってハリコフは目の上のたんこぶで、ここを攻略できないことには、来たるべきドンバス包囲戦を有利に進められません。というのも、ベルゴロド・ハリコフラインを完全に掌握しないと、補給物資の輸送もままらないからです。ハリコフを迂回して劣悪な悪路を通ることで、今の泥濘期に輸送が滞るだけではなく、ハリコフ中心部から郊外に放射状に伸びる視界がオープンな整備されたハイウエイと違って、ゲリラ兵が隠れることができる場所が点在するこの悪路を通ることで、ウクライナ軍によるゲリラ戦により、補給・輸送・増援部隊が大損害を被る恐れもあります。
ロシア軍の作戦遂行能力は著しく低い
しかしながら、ロシア軍の戦力でハリコフを陥落させることは物理的に不可能だと、多くの西側の専門家が指摘しています。ハリコフを陥落させずにドンバス戦争を終結させるのはほぼ不可能と言ってもいいかもしれません。多くの西側の軍事専門家が、ロシア軍のあまりのお粗末ぶりに驚愕させられています。ある専門家は、ロシア軍に決定的に足りないのは夜間戦闘能力だと指摘している一方で、別の専門家は、狭い空域の制空権すら確保できないのは、ロシア空軍の近代化が完全に失敗したことを証明していると喝破しています。専門家や識者の多くが、ロシア軍はNATO軍の敵どころではなく、ウクライナ軍にすら最終的に屈辱的な敗北を喫するだろうと結論付けています。さらに、プーチン氏が自軍の損害に耐えかねてこの戦争を止めたくても、ウクライナはロシア軍を領内から完全に駆逐するまで戦争を続けるだろうと言っています。つまり、この戦争を終わらせるには、侵略者であるロシア軍が、ドンバスとクリミアを含めたウクライナ領内から完全撤退するしかないということになります。プーチン氏がウクライナで核兵器を使うのはもはやifではなくwhenの段階に入っています。問題は、ロシアによるウクライナの核攻撃に我を忘れたNATOが、後先考えずにウクライナ戦争に直接介入すれば、坂道を転げ落ちるように、あっという間に全面核戦争にエスカレートしてしまうことは火を見るより明らかです。
ロシア地上軍は制空権なしの戦いを強いられている
キエフ包囲戦において、ロシア地上軍は、ウクライナ軍の攻撃により壊滅的打撃を受けたと報じられていますが、この歴史に残る屈辱的な惨敗の原因は、ロシア地上部隊が、制空権のない戦いを強いられたからだと、多くの軍事専門家が指摘しています。彼等曰く、ロシア空軍は、ウクライナの防空システムを恐れるあまり、地上部隊の支援をすることができなかったようです。そして、ロシア地上軍にとって最悪なのは、それが今も続いているということです。空軍の近接支援なくして近代戦は戦えません。ロシア地上部隊は、近代戦では有り得ない戦いを強いられており、それが大損害につながってしまっています。とは言っても、西側が指摘しているロシア空軍の能力の問題と言うよりも、ウクライナ軍の防空システム網が、西側が今まで戦ってきた、ユーゴ、アフガン、イラク、リビア、シリアの対空防衛能力より遥かに優れているからだとも言えます。基本的に、アメリカは、絶対勝てる安牌にしか戦争を仕掛けません。アメリカがイランとの戦争を全力で避けるのは、やる前から負けることが分かっているからです。ロシアもウクライナは安牌と思って戦争を仕掛けたのでしょうが、NATOと西側がここまで全力でウクライナを支援するとは夢にも思っていなかったのかもしれません。
参考サイト
Indian military studying Ukraine war, to draw tactical lessons from Russian offensive
Kharkiv will never fall, says mayor resisting Russian invasion after 48 days of battle
Russian Troops Risk Repeating Blunders If They Try for May 9 Win
Russia’s Black Sea flagship Moskva damaged, Ukrainians say hit by Neptune missiles and sunk