確かにケインズ経済学は時代遅れなのかもしれませんが、ケインズ経済学を実践しなければ、世界大恐慌まっしぐらなのが今の世界経済なのです。ケインズ経済の本質は既得権益の保護にあり、シュンペーターが提唱した創造的破壊とは、ケインズ経済学が保護している既得権益の破壊に他なりません。中高年世代が今の贅沢な生活を維持するために、若年世代に全ての負債を丸投げしていることが、今の世界経済の閉塞感の根本原因と言われています。
若年世代は、雪だるま式に増え続ける国の債務によってやがて押し潰されるでしょうし、彼等が潰れれば当然国も潰れます。もはやそれは時間の問題であり、破局的な結末は早晩確実に訪れます。それがケインズ経済学の限界であり、そこからシュンペーターが提唱する創造的破壊が始まり、新しい国家が誕生するわけです。そういった意味では、日本の未来は必ずしも暗いとは言えないのかもしれません。
ケインズは何故評価されないのか?
Keynes helped us through the crisis – but he’s still out of favour
(ケインズは世界を未曽有の経済危機から救ったが、未だ評価されないままである)
In the fifth and final lesson, Keynes would seek to explain why the recovery from the crash had, so far at least, been tentative and incomplete. His argument would have been that cutting interest rates to zero and boosting the money supply through QE were enough to halt the downward spiral in 2009 but not sufficient to bring about a lasting recovery.
Keynes would say the way to achieve this would be through a global growth pact, including more aggressive use of fiscal policy. His detractors would say what’s needed is a dose of Joseph Schumpeter’s “creative destruction” so that new, dynamic enterprises can replace old, inefficient ones. In truth, policy is neither Keynesian nor Schumpeterian, which is why we are where we are. – http://www.theguardian.com/
「五番目にして最後の教訓で、ケインズは、何故、経済危機からの回復が、少なくとも今までのところは、一時的で不完全なのかを力説したかったはずだ。彼は、ゼロ金利政策と金融緩和策によるマネーサプライ(通貨供給量)の増加は、2009年に起きた世界経済の下方スパイラルを止めるには十分だったが、持続的な景気回復をもたらすには不十分だったと主張しただろう。ケインズは、自律的景気回復には、さらなる積極的な財政出動を含めた世界経済成長協定が必要だと訴えたかったはずだ。ケインズを過小評価する層は(オーストリア学派とか)、必要なのは、ヨーゼフ・シュンペーターの提唱する”創造的破壊”という薬で、革新的でダイナミックな企業が、古臭く非効率な企業に取って代わるという事なのだ、と反論しただろうが。実際は、ケインズ学説でもシュンペーター学説でもない経済政策がとられていて、それが未だに自律的景気回復が達成されない理由となっている。」
ケインズ経済学の功罪
Fiscal conservatives hate Keynes. 財政保守派はケインズを嫌っている。ケインズ経済学の肝は政府の積極的な財政出動と中央銀行の利下げと量的緩和にあり、それはリーマンショック後に教科書的に踏襲された訳なのだが、それだけでは不十分だったというのは周知の事実である。アメリカがTARP(Troubled Asset Relief Program)を議会で評決する時に、財政保守派はこれに猛反発し(これが”Tea Party”誕生のきっかけと言っても過言ではないだろう)、共和党だけでなく、民主党からも批判が噴出した(これが”Wall Street Occupier”誕生のきっかけと言っても過言ではないだろう)。
“Too Big Too Fail”理論により、数多の”zombie company”を誕生させ、その尻拭いは納税者がさせられる仕組みとなっている。勿論、見事に復活して国に公的資金を返済した企業も存在しているが、そういった企業も政府・中央銀行のばら撒き政策によって、一時的に潤っているだけであって、延命措置が解除されれば最終的な破綻は免れないだろう。日本も円高で瀕死の状態だった輸出企業を救済する為に、異次元緩和に踏み切った訳だが、そのつけは結局、8割の下級国民が支払わされ、2割の上級国民だけが資産インフレと大幅賃上げにより、笑いが止まらない状態となっている。所謂、”wealth inequality”資産格差である。
創造的破壊が必要なのは自明の理ではあるが、”too big too fail”理論が幅を利かしている間は、実現不可能なものとなってしまっている。反ケインズ学派は、ケインズ経済学が今の時代にそぐわないという事を日本が如実に証明していると、日本を引き合いに出す事が多いが、日本が本当にケインズの経済理論に忠実だったのなら、恐らく、日本経済は完全復活を達成する事が出来ていたのではないだろうか。