ウクライナ軍はキエフ全域を解放した後、怒涛の勢いで北部に展開していたロシア軍をウクライナ領内から駆逐しています。ベラルーシにほうほうの体で撤退したロシア軍は東部方面に転進予定ですが、兵員と装備の損失がひどいので部隊の補充に相当な時間を要するだろうと見られています。さらに、ウクライナ軍はウクライナ北東部ロシアとの国境に位置するスムイ州も奪還しています。北部と北東部で戦略的フリーハンドを得たウクライナ軍は東部攻勢に向けて準備を着々と進めています。NATOと他の西側諸国も戦車(T-72)・装甲車(Bushmaster armoured vehicles)を含めた莫大な量の兵器をウクライナに供給することを約束しています。
どちらも絶対に負けられない戦い
ドンバスを賭けた戦いの火蓋が切って落とされようとしています。この戦いに勝った方が今後の戦いの主導権を握ることになるので、ウクライナにとってもロシアにとっても絶対に負けられない戦いになっています。
ロシア軍の目標は、北はIzyum(イジューム)から南進してSlovyansk(スラビャンスク)を目指し、南はDonetsk(ドネツク)から北進してKramatorsk(クラマトルスク)を目指し、スラビャンスク/クラマトルスク周辺でリンクアップすることでドンバス包囲を完成させることです。予想されるウクライナ軍の側面攻撃に耐えられる強固な包囲網の構築にロシア軍は兵力の増強が急務となっています。特にロシアはこの戦いに敗れた場合、通常兵器だけでウクライナを停戦に合意させることが不可能になるので、人類は固唾を飲んでこの戦いの行方を見守る必要があります。
負ければプーチン氏は核を使用せざるを得なくなる
この決戦に敗れれば、ロシア軍は最終的にウクライナ全域から駆逐されるか、戦術核を使うかの選択を迫られます。多くの識者は、ウクライナ軍がクリミア奪還を試みた場合、プーチン氏は戦術核を使わざるを得なくなるだろうと見ています。逆に、このままウクライナの軍事大国化を手をこまねいて見ていたら、ウクライナ軍によるクリミア奪還は現実的なものになってしまいます。アメリカがレンドリース法(武器貸与法)を復活させれば、ウクライナの軍事大国化がどんどん加速されていきます。このレンドリース法に関しては下院の承認とバイデンのサイン待ちですが、月内には法制化されると見られています。ロシアが東部攻勢・ドンバス包囲に失敗して早期停戦の望みが潰えた場合、プーチン氏に残された選択肢は核の使用しかありません。もし核を使わなかった場合、ウクライナ全土から駆逐されるだけではなく、ベラルーシのルカシェンコ政権崩壊や、他の旧ソ連諸国でもロシアの影響が弱まり、さらにフィンランドやスウエーデンがNATOに加盟すれば、プーチン氏にとって最悪の悪夢であり、ネオコンにとっては積年の夢である西側によるヨーロッパ・ロシアの封じ込めが完成してしまいます。アメリカの多くの識者・議員・コメンテーター達が、臆病者のプーチンには核を使う度胸がないとロシアによる核使用を一蹴しています。核の使えないロシアなど恐れるに足らずと言って、ロシアへ侵攻してプーチン氏の逮捕を主張する輩まで現れる始末です。
参考サイト
Race On to Rearm Eastern Front That May Decide Ukraine War
Ukraine war in maps: Tracking the Russian invasion
Ex-Russian Military Leader Warns Ukraine War Could Move Into Russia
U.S. Senate Approves Bill On Lend-Lease For Arms Supplies To Ukraine
It is certain that the battle for the Donbas will be fierce and bloody
Australia sends more lethal aid to Ukraine